約5ヶ月ぶりの孤独のグルメレビュー。でもそんなの関係ねー!


名言も少なく比較的地味な印象を受けるこの回だが、孤独のグルメの真髄が詰まっている回でもある。
舞台は大阪。井之頭五郎がこの大阪の空気に飲まれていくところから話は始まる。
路上でのカラオケや踊り、数年前の行政代執行により今ではそのパフォーマンスを見ることは難しいが、大阪文化の異質さを描写する上では欠かせないものといえるだろう。続いて街の描写とともに五郎の大阪に対する明らかな違和感が説明されている。



過剰だ・・・この国いやこの街では何もかもが過剰すぎる
大阪ってこんな街だっけ?



街と言いなおしているが、五郎の目には大阪が外国としてうつっていたのだろう。
これに対応するかのように「コーヒ」のくだりへとつながるが、この流れはユーモラスに富んで非常にうまい。自分に合った食べ物屋を見つけ出せない五郎の焦燥感を良く表しているし、外国としての大阪を決定付けるダメ押しの一打である。
結局自分に合った店は見つからず、ホテル前の屋台のたこ焼きを買って帰ろうとした五郎だがここでもペースを乱されてしまう。
客はコテコテの大阪人、おまけに酔っ払い。五郎とは対極の位置におり、下品に、心のうちそのままに自由に喋っている。正直上級者向けの空間と言えよう。五郎もかなり嫌そうな顔をしているw
そしてそんな空気を五郎が読めるはずもなく、孤独な中で一皿のたこ焼きと出会う。しかしリアクションは薄い。心の中ではおいしいを連発してるのにそれが出せない。またその表現がたこ焼きのおいしさを何倍にもして読者に想像させている。ここも見事である。


総括して、この回は正に孤独のグルメなのである。
にぎやかな街大阪で感じる孤独、そこで食べた一皿のたこ焼き、その美味さを表現できない不器用な主人公。テーマはシンプルであるがゆえに実に奥が深い。
ちなみに歯車が狂った第6話と類似性はあるが、おそらく今回はハッピーエンドであろう。完全アウェーの中でも最後に一皿の自由を得られたのだから。